為替ってどんな要因で変動するの?
円の価値はどうなっていくの??
為替はたった1ヶ月で10円上昇するなど、円安に大きく動きました。
米国株などの海外資産へ投資している方は、円安により、円換算での資産が増えています。しかし、円高になると為替差損が発生してしまいます。
円安が長く続くのでは?
確かに、円安は長期間続く見込みが大きいですが、将来の生活のために超長期で資産運用を継続すると、『円高』となるタイミングは必ずあります。
以前の記事で解説しましたが、この為替変動に対するリスクは米国株へ投資する中で大きなリスクとなります。
為替の変動する要因を知れば、為替が今後どう動くかを予想する事ができます。
今回の記事では、為替変動の『4つの要因』と長期的な円の推移について推察します。
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為替変動の要因
為替はどうやって決まるのか知っていますか?
早速結論となりますが、円が高いとか、安いとかは外貨の『需給関係』で決まります。
もっと簡単に説明すると、“円”も物と同じで欲しい人が多ければその価値は高くなり、需要が減れば価値が低くなり「円安」となります。
円が欲しい時はどんな時?
これには、下に記載した4つの要因があります。
では、この要因一つ一つについてわかりやすく解説します。
経常取引(実需)
経常収支に関する為替取引を経常取引と言います。
経常収支ってなに?
貿易とサービス,利子や不動産収入が含まれた収支です
輸出製品が増えると、日本で作られた製品つまり、“物”と”ドル”の交換が行われます。
一方、製品を作成した従業員へ給料を”円”で支払う必要があるため、両替(円転)する必要が生じます。この時に行われるのが、「ドル売り・円買い」です。
資本取引(実需)
外貨預金、株、不動産などへの海外資産への投資や、企業による工場建設による資本収支(投資収支)に関わる為替取引を資本取引といいます。
このような海外資産への流入額は年々増加し、2021年には7兆円を上回りました。>>日経新聞-海外株投信へ7兆円純増
また、2024年からのNISAによる買付額は1月分だけで、1兆8431億円と円安に大きな影響を及ぼしています。
この投資マネーには長期投資も含まれますから、10年以上『円』に戻ることがありません。
投機取引(投機)
FXで行われる為替取引を投機取引と言います。
ドル円の取引は比較的に安定しているため、数万単位の利益が欲しい場合には、レバレッジ取引が必要になります。
これが指すことは、個人であっても大きな金額を動かすことが可能であり、短期取引で行われるということです。
価格の急変が起き、一斉にショートポジションの決済が起こると、一気に「円高」となります。こちらの記事でショートカバーについて解説しています。>>ショートカバーとショートスクイーズの違い
為替介入
行き過ぎた為替レートの是正を目的として、政府(財務省)主導で行われる為替取引をいいます。
実は、為替レートには政府が好ましいと考える水準があります。この水準はどの程度かというと、『時』と『場合』によります。
何それ?
政府の判断ですので、世論で変化します
政府は選挙時の人気取りや歳入を増やすインセンティブが働きます。歳入(税金)は企業の利益増加により実現します。
そのため、輸出企業が大きい時代においては、政府求める水準は『円安』になります。
こちらの記事で、為替介入について詳しく解説しています。この記事を読めば為替介入が何回あるのか想定することができます。>>為替介入について
4つの要因の特性
為替変動には4つの要因があり、“経常取引”においては企業の国別収益セグメント構成を変える必要が生じ、簡単には変化しない特徴があります。
一方、その他の要因は人の『感情』が密接にかかわっているため、予想は困難を極めます。
例えば、為替レートに関わる感情の変化は以下の事項によって引き起こされやすいです。
変動の大きい要因
4つの変動要因では、経常取引,資本取引である「実需」と投機家による「投機」の2種類があります。
「実需」は、長期的に為替のトレンドを形成しその動きも数年間かけて徐々に変化します。
その一方、「投機」による動きは短期で大きく急変する動きが働きます。
投機と実需の割合
為替市場で1日の平均取引額は7.5兆ドルで、その内の90%が「投機」による取引です。
つまり、数週間から数ヶ月の為替レートを推測するためには投機家の動きを推測する必要があります。
何に注意すれば良いの?
各国の政策金利に注意する必要があります
金利が動けば為替は変動する
日本では預金金利が僅かしかありませんが、政策金利の高い国であれば、金利が数%つきます。
例えば、米国では機動的に政策金利が変化し、2024年の5.25%-5.5%では、預金で5%近く増やすことができます。
羨ましい!
リスクなしで5%は大きいですね
この状態を利用して、限定的なリスクで利ザヤをゲットする方法があります。
具体的には金利がほとんどない円を売って、米ドルを購入すると差額である5%弱の金利を得る手法です。
この取引を、FX市場で行うことができます。これをキャリートレードと言い、この取引が行われるから、各国の金利差が円安長期化の大きな要因となります。
特に超長期に低金利である円が用いられることが多い。
金利差が大きく開くほど、利ザヤが大きく取れるため、ゼロ金利政策が続く日本では、構造的に円が売られます。
米国以外でも「円売りペソ買い」などのキャリートレードが行われ為替リスクが内包されます。
注意点はないの?
高金利通貨の暴落に注意です
マイナーな通貨であるほど、通貨価値の逓減が著しいため、通貨の需要を高めるために高金利政策を取っている国も存在します。
その国の政治体制や物価上昇率を考慮してトレードを行うと良いでしょう。
長期的な為替の展望
個人的な推測となります
今の、日本の実態を詳しく見てみると暫くは”円安”傾向となりやすいです。
経常取引の効果が限定的
こちらのグラフが、日本対海外の貿易収支となります。
今より10年以上前には貿易黒字となっていました。注視しなければいけないのが、現在は赤字へ変化した点です。
これは、2011年の全ての原子力発電所の停止に伴う、エネルギー輸入と円高による企業の生産拠点の海外化が要因です。
過度な円高による生産拠点の流出
2011年の震災後には、ドル円が約76円まで上昇しましたので、輸出企業は日本円ベースでの売上を達成するのに苦労しました。
また、円高により海外事業展開のハードルが下がため、生産拠点を海外へ移転させる企業も一気に増加しました。
一度、海外へ生産拠点を移動させた後に、国内生産へ戻すのは、下した経営決断の失敗を結論付けるため、社内政治も絡んで難しい決断となります。
オーソドックスな流れでは、業績に影響が出始める2年程度の為替動向を見てから、生産拠点の検討が行われるでしょう。
資本取引による円売りが増加傾向
このチャートを見ると、外貨資産へ投資マネーの流出が年々増加していることが読み取れます。
3年前の流出量と比べて現在、約7倍の額の金額が国外へ流出しています。
2024年から始まった新NISAへの投資額は成長枠でこれまでの約3.3倍となる1.5兆円と大きい。
また、投資信託ランキングから、そのほとんどが海外資産への投資と推定されています。>>NRI-新NISAが投信マーケットに与えた影響
投資マネーの流入が期待薄
日本にも魅力的な製品と産業があれば、投資マネーの流入が見込めます。
残念ながら、現在の日本には魅力的な製品がなければ、世界を牽引していくような企業もありません。
・世界を魅了する製品が無い
・優秀な人材をうむ母数が少ない
不安な日本の人口動態
日本の中央年齢は45.9才となり、日本の生産年齢人口は年々減っていきます。
・消費が旺盛な年齢で、労働の中核的な担い手
この流れを断ち切るには、政府の仕事となりますが人口が少なく更に投票率が低い子育て世帯向けに政策をしても、『票』に直結しません。
そのため、先進国と比較して結婚や子育て支援に物足りなさを感じてしまいます。
2020年から第3子以降について月6万(15年で約1,000万円)が国会で議論〔2〕され、明確な実現時期が決まっていません。
人口が減れば、『優秀な若者の絶対数が減る』『労働力が減る』という事になりますので、企業の明るい未来が想像できません。
円高への転換
円高への転換するポイントは『政府』と『日銀』の協調になります。
これまで、日銀は市場に大量のマネーを供給しました。当時の黒田総裁は2022年度が最終年度となります。
次の総裁、副総裁の選任を行うのが岸田総理で、新しい総裁は「植田総裁」となります。
日銀の出口戦略
次の日銀総裁に求められるのは、出口戦略です。
植田総裁は学者上がりで、黒田総裁が行った異次元緩和に対し、快く感じていないと推察できます。
その証左に、「イールドカーブコントロール撤廃」と「マイナス金利解除」に早々に取り組みました。
※世界的に見て、長期債券の金利抑制を行うのは稀
総裁の舵取りはどうなの?
評価が高いです
異次元的な緩和から、通常の緩和の方向へ混乱を生じることなく正常化できたのは大きな成果です。
しかし、日銀会合後の総裁の言葉で日本の利上げはまだ遠いと思われてしまい、円安が進んだことがありました。>>総裁「円安が物価の基調に大きな変化なし」
→円安が物価への影響は今の所なし。 →物価への影響を及ぼすリスクはゼロではない。
その後、急遽に岸田首相と会談することになり、発言の訂正がなされています。
ベクトルは円高方向
日銀の動きは、これ以上ない緩和から引き締めへ動きます。
引き締めは「金利上昇」と「マネーストックの減少」を表し、どちらも円の価値を上昇させる政策です。
日銀の引き締めと政府のバラマキ抑制で、円高トレンドへの転換がなされる可能性があります。
4つの為替変動の要因まとめ
為替変動の要因には実需サイドの経常取引、資本取引があり、それ以外に投機家による投機マネーの取引が行われます。
これに加え、政府による為替介入がこれまでの為替トレンドと逆のベクトルで短期集中で行われます。
為替市場を俯瞰すると、「投機取引」がその90%を占めるため、短期的な値動きは投機家の動きに注意が必要となります。
投機家が注目している点は、各国の金利なので、中央銀行による金融政策に対して敏感に反応します。
- Step14つの要因
・実需サイド
経常取引、資本取引
・投機サイド
投機取引
・政府サイド
為替介入 - Step2市場における影響度
投機>>実需
※90%が投機取引 - Step3為替変動(長期)
長期変動:実需を動かすマクロの動き
- 世界を俯瞰して未来の産業とその中心国
- 米国政府が注力している政策
- 政治的な金の動きを考える
- Step4為替変動(1年程度)
短期変動:投機マネーの動き
- 中央銀行の金融政策
- 偏った投資マネーの決済
- トレンドに対する反対売買
記事が、タメになったと思われたら、“SNS” や “リンク” で紹介して頂けると今後の励みになります。
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