タックスロスセリングで株価が上がるの?下がるの?
いつ頃起きるの?
11月最後の木曜日にあるアメリカの感謝祭が終わると同時に始まるのは、「タックスロス・セリング」です。
タックスロスセリングとは、『所得税の支払いを減らすために行う株式売却』のことで、いわゆる『損出し』のことです。
今回は、これからの相場で気を付けたいタックスロス・セリングが起きやすい3つの特徴について解説します。
3つの特徴を知っておけば、株式の下落が起きやすい企業に対して、下落する前に売りきる対策が出来ます。
米国の税制
アメリカも日本と同様、1月1日から12月31日の収入に対して税額が決まります。
しかし、株の売買益(以下、譲渡益)に対する税率が日本と異なる算出方法となります。
アメリカの場合、譲渡益が発生した場合、固定された税率〔2〕を支払うわけではなく、株式を保有する期間、利益の大きさに応じて税率が決まるようになっております。
〔2〕固定された税率:日本の場合「分離課税」制度で上場株の売買は20%+復興支援税の固定税率となっている。
1年保有の有無で税率が変化します
1年以上と未満で変わるんだぁ
ロングターム(Long term)
下の表は1年以上保有の税率です
税率 | 独身、非課税者 | 世帯共同申告 | 世帯主 |
0% | $0~ | $0~ | $0~ |
15% | $41,675~ | $83,350~ | $55,800~ |
20% | $459,750~ | $517,200~ | $488,500~ |
ロングターム税率は3段階の税率に分かれており、「売却益」が多いほど税率は高く、保有期間が1年以上であれば20%で税率が頭打ちとなります。
後述する、ショートターム税率と比較して税金が少なく済みますので、1年以上の長期保有株については「売り」となる可能性は少ないと予想できます。
ショートターム(Short term)
ロングタームと同様、ショートターム税率も個人の総所得額により変化します。
下の表は保有期間が1年未満の税率です
税率 | 独身 | 世帯共同申告 | 世帯主 |
10% | ~$10,275 | ~$20,550 | ~$14,650 |
12% | $10,275 – $41,775 | $20,550 – $83,550 |
$14,650 – $55,900
|
22% | $41,775 – $89,075 | $83,550 – $178,150 |
$55,900 – $89,050
|
24% | $89,075 – $170,050 | $178,150 – $340,100 |
$89,050 – $170,050
|
32% | $170,050 – $215,950 | $340,100 – $431,900 |
$170,050 – $215,950
|
35% | $215,950– $539,900 | $431,900 – $647,850 |
$215,950– $539,900
|
37% | $539,900~ | $647,850~ | $539,900~ |
ショートターム税率は7段階の税率に分かれています。
ロングで0%でもショートでは10%となるんだぁ
税金の多寡から生まれる「損出し」動機
保有期間が1年未満である銘柄の譲渡益が大きいと、税金が大きくなる構造であることが分かりました。
税金を小さくするために効果的なのは、保有期間が短い銘柄で含み損が大きい銘柄です。
含み損とは:所有した時点の株価に比べ、下がっているが売却していない株の未確定損失のこと
含み損を抱えた「銘柄の清算」と「税金の減少」という、損切りという一つの手段で2つの利点を得るというインセンティブが働きます。
これが、タックスロスセリングが生まれる背景です
タックスロス・セリング(Tax Loss Selling)
タックスロスセリングは、感謝祭が終わり年末にかけて起こります。
繰り返しになりますが、タックスロスセリングを端的に言うと、税逃れの実現損が頻発する現象のことを言います。
これが活発になると、一年を通して下落している銘柄が年末にかけて更に下落してしまいます。
・現象:下落株がより下落する
・保有期間が1年未満の株に発生しやすい
具体的に発生しやすい「銘柄」と発生しやすい「時期」について解説します。
タックスロスセリングで「下落しやすい銘柄」
先に説明したとおり、損失を確定させることが目的なので、大きく下がっている銘柄が節税効果が大きくなります。
これが顕著に現れるのが、上場後一年未満の銘柄。
つまり、IPO株です。
なんで?
IPO株は投資家の全員が一年未満の保有期間となるからです。
更に、小型株ほど出来高が小さく、個人投資家の売りが価格に反映しやすい。
これをまとめると、タックスロス・セリングが活発になりやすいのは、IPO〔4〕された後に上昇局面がなく下落し続けた銘柄に起きやすく、小型株であるほど、その影響は強く表れやすい。
〔4〕IPOとは:(Initial Public Offering)の頭文字で、 直訳では『初公開の売り物』となります。未上場企業が、新規に株式を証券取引所に上場することを言います。
・下落幅が大きい銘柄
・新規上場株(IPO株)
タックスロスセリングの発生時期
起こりやすい時期は、感謝祭(サンクスギビング・デー:11月の第四木曜日)後となります。
12月25日は米国人にとって大きなイベントとなるクリスマスがあります。
ブラックフライデーという、大きなバーゲンセールとクリスマスのプレゼントへ充てる資金が欲しい投資家も相まって、12月のクリスマスにかけて売られやすくなります。
タックスロスセリングに備えて
日本の場合、譲渡損の繰り越しは3年間という制限がありますが、米国税制は無期限となります。
そのため、上昇局面が少ない年には、タックスロスセリングが顕著に起きます。
また、米国には「ウォッシュセール・ルール」があります。
ウォッシュセール・ルールで、一度売られた銘柄は中々上昇しにくくなります。
株式を損失で売却し、その前後30日以内(61日間)に実質的に同一証券を購入した場合、損失の控除は認められません。
日本もタックスロスセリングが起きます
私達が住む日本では、20%+復興支援税の税金が課されます。
米国と同じように、あなたが、損出しで節税の恩恵を受けられますので先回りで処分することをオススメします。
特に、10月は株価が低迷しやすい季節性がありますので、その前の売却がベストです。
季節性って?
こちらの記事で、株式市場の「季節性」について詳しく解説しています>>投資サイクルについて
「損出し」には、以下の優先順位で整理すると、あなたのポートフォリオの効果的な整理ができます。
2.損失の大きい
3.自身のポートフォリオの半分以上がプラスとなるまで繰り返す
タックスロスセリングで儲ける
タックスロスセリングを利用して、利益を得る方法があります。
下の書籍では、順張りで利益を得る方法について記載しています。
順張りって?
下落なら「売り」を行う手法です
逆張りと違い、順張りは投資資金を効率的に活用する売買手法なので数千万円から数億円の大金を必要としません。
また、利益が出やすい投資手法ですので初心者に適した売買手法となります。
著書はスイングトレードで有名な「アラン ファーレイ氏」で、200以上の豊富なチャートを分析して、短期トレードからギャンブル的要素を排除した画期的な書籍です。
まとめ
タックスロスセリングは税金逃れの「損出し」によるもので、上昇局面が少ない年に起きやすい特徴があります。
発生時期は11月下旬からクリスマスの間にかけて起こりやすく、IPO株で小型株が顕著に現れやすいです。
仮に、あなたが損出しを行うとすれば、株式市場が低迷しやすい10月前に行うが良いでしょう。
もし、参考になったと思われたら、友人や親戚に “SNS” や “リンク” で紹介して頂けると今後の励みになります。
関連記事
タックスロスセリングは、1月効果やデッドキャットバウンスとの関係が深く、トレードのチャンスとなります。
日本でも税金が1月1日から12月31日となります。
日本の課税法について解説しています。
コメント