この書籍を端的に言うと、「長期的なリターンが期待できる唯一の方法はインデックス投資である」と結論付けている書籍です。
発刊:1973年
販売累計:全米150万部
この書籍が約50年ほど前から第十二版まで改定され出版されているのは、説明が学術的に記載されており、その内容に腑に落ちることができるからです。
米国市場ではこの投資手段が最善であり、なによりも、多くの方がこの投資手法で資産を増やしていたからです。
『投資の大原則』や『敗者のゲーム』では簡素過ぎて物足りない方へ『新たな気付き』を与え、満足のいく一冊となります。
この記事では、名著「ウォール街のランダムウォーカ」についての”要約”と、書籍内容を”深掘り”します。
「ウォール街のランダムウォーカー」について
本書の中身に入る前に、書籍の概要について認識しておくと、より早く理解ができます。
それでは、本書の背景を確認してみましょう。
「ウォール街のランダムウォーカー」の著者:バートン・マルキール
バートン・マルキール氏は1932年に生まれたアメリカ合衆国の経済学者です。
同氏はハーバード大学で学士号とMBAを取得しており、プリンストン大学で経済学の博士号を取得しています。
その後、イェール経済大学院学部長を務め、証券取引所理事等を歴任しバンガードグループのディレクターとして28年間過ごしました。
バンガードグループ?
有名な資産運用会社です
バンガードはブラックロックに次ぐ、世界2位の投資信託および上場投資信託(ETF)の提供者で、その運用総資産額は2020年1月31日時点で7.1兆米ドル(約900兆円)になります。
投資信託とETF以外にも証券サービス、ファイナンシャル・アドバイス・サービス、教育資金サービス、など数々のサービスを提供しています。
著者はまだインデックスファンドが存在していない1973年に本書の初版を通して、インデックスに連動した投資を奨めています。
著者であるバートン・マルキール氏は『効率的市場仮説』を主張しております。
効率的市場仮説??
「株価は常に正しい」と考える仮説です
・株価に影響する情報は即時「価格」に反映される
・つまり、今の株価は常に正しい
それでは、次に本書の題名である「ランダム・ウォーク」の意味について解説します。
ランダム・ウォークとは 未来の株価は予測できないことを表す
「ランダム・ウォーク」はウォール街で忌み嫌われる言葉で、意味を理解するとその理由がわかります。
物事の過去の動きからは、将来の動きや方向性を予測する事は不可能である
引用:ウォール街のランダムウォークより
専門の投資顧問サービス、そして証券アナリストの収益予想は無駄だという意味です。
市場は「カオス」と著者は語ります
つまり、「ランダム・ウォーク」とは、どのような知見を用いても株価を短期的に予測するのは難しいということを表しています。
「ウォール街のランダムウォーカー」の構成
1部~3部で株価を推測するのは不可能という事を学術的に解説し、4部で投資の主軸はインデクス投資という内容で構成されています。
初版から12版までで何が変わっているの?
新しい投資手法の解説や暗号資産についても触れています
版数を重ねる毎に、”スマートベータ”などの新しい投資手法を解説しています。
仮想通貨など新たな資産にも触れ、その上で資産運用する上で、新たな投資手法や新たな投資対象の肯定できる部分のみを取り入れ、堅実に資産形成を補うための参考書となる書籍です。
「ウォール街のランダムウォーカー」の内容
内容は売買をせずに、正しいインデックス投資を超長期に渡り行う事ができれば、ファンダメンタルやチャート分析を行わずとも、堅実に資産形成ができる事が書かれている書籍です。
『バイ&ホールド戦略』です
”正しいインデックスファンド”の定義の中で驚いたのが、S&P500は正しいインデックス投資ではないと記述されていたことです。
S&P500とは:米国を代表する企業約500社からなる株式指数のことです。
その理由は「アメリカ経済の大きな動きは中小企業が主でありながら、中小企業の数十社を除外しているから」と筆者は記述しています。
次に、書籍の要点についてくわしく解説していきます。
プロの投資家はサルにも劣る
書籍の中では、ファンドマネージャーの成績をこき下ろしています。
サルがダーツで選んだ銘柄が、ファンドマネージャーが選んだ銘柄のリターンをアウトパフォームする事がある。
引用:ウォール街のランダムウォークの超訳
筆者はプロが運営する投資信託の長期リターンは市場平均よりも低いという明確なデータを提示しています。
アクティブファンドは手数料が大きく(1.5~3%)、投資家の収益を奪い、超長期で見ると市場平均に劣るパフォーマンスというダブルパンチであると筆者は説いてます。
インデックスファンドの優位性
インデックスファンドの優位性は以下の3つがあります。
インデックスファンドはコストが低く(0.03%程度)少額で幅広い分野に投資が可能です。
さらに、「定額買付」を行う事でドルコスト平均法で市場価格の平均を狙っていくことが可能となります。
考え方をシンプルにすると、「高い手数料を払ってもリターンが同じであるならば、手数料が安い方がリターンが大きい」そのため、インデックスファンドを購入するのが合理的です。
投資のリターンは資産配分で決まる
資産配分とは、株式、債券や金などのアセットアロケーションの事を指しています。
また、リスクを最も低下させるポートフォリオは、米国株式を82%、外国株式を18%でした。書籍の中で、外国株式を(EFA)としています。
北米を除く先進国ETF
日本21.58%、イギリス14.55%、フランス11.36%、スイス10.45%、ドイツ8.4%、オーストラリア8.02%、オランダ5.09%、スウェーデン3.37%、デンマーク2.87%、香港2.59%、スペイン2.58%、イタリア2.13%
別の記事になりますが、非相関の金融資産へ投資するとリターンが高まる事例を記載しています。記事はこちら >> 資産分散の有効性について
収益を上げる4つのルール
他にも、リターンを堅実にするために、PERなどの指数を用いた割高株を避け、砂上の楼閣を築く視点で株式を保有すると短期的なリターンが狙える事など、『4つのルール』について記載されています。
イギリスの経済学者ケインズが唱えた、株価変動のたとえで、「大衆が熱狂しやすい未来を掲げ、企業の価値に比べ株価が超割高になる現象」のことを指しています。
・企業のファンダメンタル価値以上の割高で買ってはならない
・「砂上の楼閣」作りが始まる見通しのある銘柄を購入する
・なるべく売買の頻度を減らすこと
ウォール街のランダム・ウォーカーの深読み
著者が言うインデックス投資では、大きな損失なく『超長期的にみんなが富を浅く得る方法』としては、正解です。
しかし、この方法では「短期で大きな資産が稼げない」と読むこともできます。
また、本書は「米国市場を主戦場」に書かれています。そのため、私たちのように他国いる者にとっては多少環境が変わってきます。
投資のコアが米国
こちらのチャートは、米国市場に上場している3,000企業の株式指数です。
RUA(「ラッセル 3000」指数)
米国株の3,000銘柄からなる指数
ご覧のように、米国市場は1988年からリーマンショック(2008年)で大きく下がる時もありますが、結果的に大きな右肩上がりとなっています。
右肩上がりの市場では、どれだけ早く市場にお金を投入できるかが勝負となります。
つまり、本書の初版が出た頃から筆者の主張通り、数千の企業に投資するインデックス投資が資産運用の最適解でした。
最大のデメリット
本書は500ページ以上にも渡る長編書籍です。本書の読みどころは、2部からのインデックス投資を選択するに至る過程です。
短時間で読み終わる書籍ではありませんが、学術的データとグラフを多用しているため、全ての投資家にとって有益な情報となります。
時間が無く、「どう投資を行えばよいのか?」という事のみを知りたい場合は、4部の“ウォール街の歩き方の手引き”を読むことで結論がわかります。
個人投資家の参考書
この書籍は全ての投資家にオススメできます。
この書籍は1部では“バブルの歴史“が書かれており、それだけでも人々の熱狂はどういったものかを理解するのに価値があります。
ただし、繰り返しになりますが500ページにも渡る書籍なので、投資初心者が一冊目に読む本としては重い。
そのため、一冊目には『投資の大原則』などの投資全体について理解する書籍を読んでから、二冊目にこの書籍を読むことで、読み終えた後にはより深い知識が得られ、株式投資の軸ができること間違いありません。
まとめ
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