超長期投資で知っておきたい指数
「シラーPER」と「PER」の違い
2000年のITバブルの時代に、市場が過大評価されていると警鐘を鳴らし、一躍有名になったのが、この「シラーPER」です。
シラーPERの評価方法は主にS&P500に用いられますが、どの指数にも適用でき、バリュエーションの判断を正しく下すことができます。
実は、このシラーPERは積立投資などの資産形成を行なっている方全員にとって重要な指数となります。
なんで重要なの?
超長期的な収益が読めるからです
この記事では中長期投資家に重要な指数であるシラーPER(CAPEレシオ)について解説します。
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「シラーPER」について
1930年代に、バフェットの師匠であるベンジャミン・グレアムとデビット・ドッドは収益の平均は長く取った考え方が有効だと提唱しました。
その後、2000年にノーベル経済学者であるロバート・シラー教授が出版した著書で(Cyclically Adjusted Price-to-Earnings Ratio)頭文字で「CAPE レシオ」として、その有効性が紹介されました。
考案したロバート・シラー氏から「シラーPER」とも呼ばれています。
株価÷インフレ調整後の10年平均EPS
CAPEを日本語で訳すと「景気循環調整後の株価収益率」となり
このシラーPERを使うことで、その国や指数へ投資を行なうと超長期的にどれくらいの収益が見込めるのかを判断できるようになりました。
PERの問題点
普通のPERじゃだめのなの?
一般に用いられる「PER」では”ある問題点”があります。
それは、1年間のEPS平均を用いている点です。
株価÷1年平均EPS
EPSってなに?
純利益を1株に割ったものです
実は、この方法には問題があります。
それは、「EPSを参照する期間が短すぎる」という問題です。
参照期間の短いという欠点を「シラーPER」(CAPE レシオ)はEPSの10年平均という形で解決しています。
シラーPERと収益率
収益率:10~15年
上にそれぞれシラーPER毎の10~15年における収益率が記載されています。
いずれの国も、30を超えなければ、資産が減るようなことはありませんでした。
20を超えると、投資先によっては債券へ投資した方が収益があがる国が幾つかあります。
日本:20以下-収益7.3%以上
シラーPERが低いほど収益率が上がる傾向がある。
次に、135年間のシラーPERにおける収益率をプロットした散布図は下になります。
直観的にどの段階で投資すれば有利かわかります
x軸:シラーPER
y軸:10~15年 収益率
抽出期間:1881-2015
こちらの散布図は1881〜2015年における10~15年の収益率です。
全体の傾向として、x軸のシラーPERの値が小さいほど、y軸にある収益が大きくなる傾向があります。
S&P500を見ると30を超えると収益が5%を下回っています。
全世界バージョンは無いの?
全株式市場は下図になります
下図は「全ての株式市場」を合わせた散布図で、オルカンの代替として確認することができます。
x軸:シラーPER
y軸:15年 収益率
抽出期間:
・1881-2015(US)
・1979-2013(その他国)
この散布図での例外となる国は「スウェーデン」「デンマーク」です。
この両国どちらともシラーPERが高いにもかかわらず、5%以上の収益を達成しています。
逆に言えば、その他の国はシラーPERと長期収益率に逆相関の関係がありました。
現在の「シラーPER」
Shiller PE Ratio (CAPE Ratio) [WhaleCrew] by WhaleCrew on TradingView.com
・コロナショックのような短期暴落と早期回復する値動きは表れていません。(2020年3月のシラーPERは24.82)
・テーブル表示で「月別」の選択
先述した散布図から米国の将来の収益を予測すると、長期収益率が1%を下回る可能性が高くなっています。
また、1929年に30に近づいた時には「世界恐慌」が起き2000年の44を付けた時には「ITバブル崩壊」が起きました。
現在は30を超えています
・24倍で低い収益期待
・30倍を超えると必ず暴落が起きる
じゃあ今は買い控えした方が良いってこと?
そうではありません
シラーPERの誤った使い方
実は、シラーPERはオシレーターとして使えません。
オシレーターって?
買われ過ぎや売られ過ぎを測る指数です
シラーPERは「天井」や「大底」などの転換点を示す有益な市場ではありません。
つまり、シラーPERが高いからと言って、買い控える必要はありません。
シラーPERで有益となる点は、超長期的な収益率を予測するのに精度が高い点です。
本当に正確なの?
バンガードによると、超長期のリターンとこのシラーPERによって算出される収益率には高い正相関(87%)となっています。
つまり、シラーPERによる10年間超の収益率にはある程度信頼が持てます。
「シラーPER」が高い時の対策
現在のようなシラーPERが高い時には以下の対策が有効です。
先述したように、シラーPERは割高を示す指標ではありません。
そのため、指数が下がり始めた時に現金化をして、数年に分けて再投資を行なうのが得策です。
例えば、資金の半分を現金化します。その後、1年毎に3回に分けて購入を行います。
すると、売却をしなかった場合と比較して収益の向上が見込めます。
上手く売却できるかなぁ
別の手法もあります
非,逆相関の資産を組み入れる
先述した対策では、売却タイミングを計る必要があります。
その点、2つ目の策は非相関または逆相関の資産を組み入れる手法で、タイミングはあまり関係ありません。
この方法は「資産分散」とも言われています。
これなら、できそう!
シラーPERを使うとリターンが増えます
資産分散も必要な時に行えば、さらにリターンが良くなります。
具体的には、シラーPERが高くなっている時に資産分散をして、シラーPERが低くなると株式の比率を増やす方法です。
・超長期でリターンに期待ができない
→資産分散で収益を上げる
<シラーPERが低い>
・株式でリターンが見込める
→株式への投資割合を増やす
下図は株式と非相関の資産である「金」をポートフォリオへ組み込む一例です。
上図の場合、7年間で株式の買戻しとなりました。
買戻し後の10-15年で4倍以上のリターンを得ることができています。
例のように、非相関の資産を組み入れることは、リスクを抑えることに繋がり資産の増加に寄与します。
非相関の資産を組み入れることで、株式のみよりも資産が増える具体例をこちらの記事で解説しています。>>株式プラス他の資産
世界各国のシラーPER
策の3つ目は、シラーPERが低い市場へ投資を行なうことです。
下図は2024.9時点における各国のシラーPERです。
・帯状の部分は最低、最高値から25%~75%
先進国で低いのは「日本」で、新興国では「中国」が最も低いです。
その一方、昨年ごろにもてはやされた「インド」については過去の値以上にシラーPERが大きく、長期のリターンは小さいと予測できます。
人気なインドが割高なんだ
人気な国は割高になりやすいです
不動産バブルの崩壊が始まっている「中国」はかなり安くなっており、10年後の予測シラーPERは₊2.2%です。
シラーPERと金融商品の比較
シラーPERによる予測と他の資産利回り比較できないの?
こちらのサイトで参照できます
リサーチ・アフィリエイツで世界各国の「シラーPER」から予測した今後の利回りと、REIT、債券、コモディティなどの利回りを公開しています。
株式の価格変動やリターンは大きくなり、広がり過ぎますので、上図では局部的なものを載せています。
世界各国を一度に表示し直したものが下図になります。
凄い
コモディティについても、上図のように一覧で表示できますから、過去の変動幅から現在の位置と、平均回帰までの幅が直観的に把握できます。
【まとめ】シラーPER
シラーPERが「使えない」「関係ない」と配信している方は、シラーPERで相場の転換点を導き出そうとしているからです。
しかし、その狙いにはシラーPERは適切でなく、10-15年以上の超長期の収益を予測するのが適切な使い方です。
今では、便利なサイトによって現在のシラーPER値が簡単に確認できますので、シラーPERが高値の時に分散投資を行なうと資産形成の手助けとなります。
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