投資の大原則は、『ウォール街のランダム・ウォーカー』の著者であるバートン・マルキールと『敗者のゲーム』で知られるチャールズ・エリスによって書かれた書籍です。
この書籍を端的に紹介すると、金融資産を築くための教科書のような書籍です。
先述した2つの書籍が難しい方も、「投資の大原則」はシンプルに著作されているため、初心者でも理解可能な『教科書』となります。
『投資の大原則』について
二人の著者による研究と経験は二人合わせて100年以上となります。この研究結果が初心者でも、解かりやすくまとめられた一冊となります。
投資の大原則 最新版と初版の違い
最新版は第六章が追加されています。この章では「リーマンショック後の期間においてもルールが有効なのか」バックテストを行っております。
バックテストとは:売買ルールを過去の値動きに当てはめ、その有効性をテストすることです。
大きな金融危機が起きた当時は株価の変動が激しい相場環境で、長期投資は時代遅れと言われていました。
書籍にあるバックテストでは、定期積立投資とリバランスを行う事でどの様な結果になるかが視覚化されています。
投資の大原則の著者:バートン・マルキール氏について
バートン・マルキール氏は1932年に生まれたアメリカ合衆国の経済学者です。同氏はハーバード大学で学士号とMBAを取得しており、プリンストン大学で経済学の博士号を取得しています。
よくわからんが、凄そう
その後、イェール経済大学院学部長を務め、証券取引所理事等を歴任しバンガードグループのディレクターとして28年間過ごしました。
著者の代表書籍「ウォール街のランダム・ウォーカー」は投資家のバイブルとして有名です。
こちらの本も要約していますので、良かったら参考にしてください。
投資の大原則の著者:チャールズ・エリス氏について
もう一人の著者であるチャールズ・エリス氏は1937年に生まれました。ロックフェラー基金、ドナルドソン・ラフキン・ジェンレットを経て1972年グリニッジ・アソシエーツ設立。
こっちも、凄そう
その後、代表パートナーとして投資顧問会社や投資銀行などの経営・マーケティング戦略に関する調査やコンサルティングを手がけ、各業界トップ経営者の間で信頼を得ました。
著者の書籍「敗者のゲーム」は初心者投資家にオススメしたい書籍です。
こちらの本も要約していますので、良かったら参考にしてください。
それでは、本書の内容を要約します。
投資の大原則の概要
投資の大原則は前述した、二人の意見により作成されたものです。そのため、一人の意見による偏りがなく、ミスリードが小さいです。
投資の前にすべき事
投資の前に抑えておく事項として、第一章は貯蓄について書かれています。
節約への意識(達成感や充実感を得るため)
投資によって資産を増やす以前に種銭が必要ですし、いくら資産を増やしていたとしても、自分が望まない支出が多ければ、意味がありません。
この書籍で著者は、
節約は我慢に我慢を重ねて無理をするのとは全くの逆だ!節約するのは充実感、達成感を得るためだ!
と言っています。節約はダイエットと一緒で、目標を超えた時の達成感は何とも言えない快感を感じることができます。コツは小さな目標を立てて達成する体験を重ねることです。
そうすると、自分に対して自信が生まれます。つまり、節約は『自信』を付ける行為になります。
節約と聞くとなんだかな…
そんな時は、言葉を変えましょう
『節約』と思うとどうしても「セコセコ感」が出るので、『最適化』と言う言葉を使って、受け入れることも大切です。
複利の力(味方につけると最強)
書籍には『複利』についても書かれています。
複利を味方につけると、どんなに心強いか…そして、複利を敵に回すとどれほど恐ろしいのかを、カードローンを例として上げています。
複利によって支出が雪だるま式に増えていく恐怖が学べます
書籍の中から一つ紹介します。
【複利を味方につける】
双子の兄弟がいて、兄が20歳から20年間毎年4,000$を投資しました。
一方、弟は40歳から25年間毎年4,000$を積み立てました。
この二人が65歳になった時の資産は兄250万$、弟40万$の雲泥の差となりました。
投資元本:8万ドル➡250万ドル
(960万円➡3憶円)
投資時期:20歳から40歳
【弟:慎重に投資】
投資元本:10万ドル➡40万ドル
(1200万円➡4800万円)
投資時期:40歳から65歳
如何に投資を速く行い、複利を味方を付けた方が有利かを認識できるエピソードです。
“KISS”ポートフォリオの考え方
第五章では『KISS』〔1〕のポートフォリオが紹介されています。
〔1〕KISSの意味:Keep It Simple Sweetheart
KISSポートフォリオは『シンプルかつ、シンプル過ぎない』ポートフォリオで、具体的には分散が出来て、流動性が高く、経費率の低いETFを組み合わせるという内容です。
S&P500より全米株(分散についてフォーカス)
S&P500は米国を代表する株式指数です。この指数に組み入れられた銘柄を見ると大企業で構成されているのがわかります。この書籍では全米株を推奨しています。
その理由は、将来急成長が期待できるのは大企業では無く小中企業だからです。S&P500に連動する指数へ投資すると、米国に上昇する大型株(70%)に限定して投資をする事となります。
投資先を限定する商品は、適正な分散投資が出来ないと同時にリターンが減ってしまいます。
米国のみより全世界や他のアセット
投資先を限定するという視点は、米国だけを投資の対象としているのにも当てはまります。全世界の市場に上場している株式をフェアに見て、時価総額加重平均法で投資された全世界株を奨められています。
また、資産の枠で見ると『債券』への投資も分散するのに必要だと筆者は語ります。
債券投資についてもアクティブファンドより、数千の分散されたインデックスファンドの方が運用成績が優れています。
「S&P500」より劣った大型株アクティブファンドの割合 | |
1年 | 60.90% |
3年 | 79.80% |
5年 | 86.58% |
10年 | 85.61% |
15年 | 92.19% |
出典:SPIVA® U.S. Scorecard(2023)
大暴落時には『金』などのコモディティへも検討余地があります。
KISSポートフォリオの具体例
先述したように、KISSポートフォリオを作る時には、『分散』がキーワードです。この分散されたポートフォリオは2~4銘柄のETFを組み入れるだけで作ることが出来ます。
資産 | ティッカー | 投資対象 | 銘柄数 | 経費率 |
株式 | VTI | 全米株 | 3,700 | 0.03% |
株式 | VXUS | 米国以外の株式 | 7,400 | 0.07% |
株式 | VT | 全世界株 | 8,900 | 0.07% |
債券 | BND | 米国債券 | 10,100 | 0.035% |
債券 | BNDX | 米国以外の債券 | 6,300 | 0.07% |
こちらは、一つの銘柄を取得するだけで、数千の企業に分散して投資となるETF〔1〕となります。
つまり、分散投資は「“数十”や”数百”では足りない」ということを暗に示しています。
〔1〕ETFとは:日本語訳で上場投資信託のことです。投資信託を株式のように市場で売買できる商品のこと。
自分に適したポートフォリオ
ポートフォリオは各々によって異なります。下の要素によってご自身に適したポートフォリオを作るヒントとなります。
参考に2人の著者の年代別ポートフォリオを紹介します。
バートン氏
年齢 | 株式比率 | 債権比率 |
~30代 | 75~90% | 25~10% |
40~50代 | 65~75% | 35~25% |
60代 | 45~65% | 55~35% |
70代 | 35~50% | 65~50% |
80代以上 | 20~40% | 80~60% |
チャーリー氏
年齢 | 株式比率 | 債権比率 |
~30代 | 100% | 0% |
40代 | 85~100% | 10~0% |
50代 | 75~85% | 25~15% |
60代 | 70~80% | 30~20% |
70代 | 40~60% | 60~40% |
80代以上 | 30~50% | 70~50% |
著者はどんなポートフォリオなの?
チャールズ・エルス氏は80歳ですが、株式100%だそうです
9つの基本ルール
著者によるとKISSのポートフォリオは個人投資家の9割方に役立つと述べられています。このポートフォリオには『9つのルール』があります。
どれも大切ですが、とりわけ『3』『7』が非常に大切なルールとなります。ただし、注意が必要なのは『4』の生命保険に入っているか?と言う所です。
保険については日本と保険制度が異なる米国のケースとなりますので、日本人の場合は『掛け過ぎに注意』の認識がよさそうです。
保険についての考え方はこちらの記事で解説しています。
この9つのルールは投資初心者に忘れてはいけない、重要なルールとなります。
詳しくは書籍に記載されていますので、気になった方は是非本書を一度読んで頂きたいです。
まとめ
KISSポートフォリオの考え方は、「変動率を抑えたい投資家」や「元本割れをなるべく回避したい投資家」に適したポートフォリオとなります。
分散を考えた時に、自力で企業を数千社選ぶのは不可能です。そんな悩みを解決するのがETFや投資信託です。
ETFを使えば、時間をかけることなく少額で分散投資が可能となります。
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