全世界株と米国株ってどっちが良いの?
どういう考えで判断すれば良いの?
投資初心者が商品選びでよく悩む問題が、全世界株投資と米国株投資どっちが良いのか?という問題です。
実は、この選択にたどり着いた時点で資産形成で、大きく失敗する事はありません。
でも選択の基準ってないの?
一応、学者は全世界株を推しています
そもそも、インデックス投資は「分散投資」という考えから選ばれています。原点に立ち返って考えてみると、地域分散が行える全世界へ投資するという考えが合理的だという解が導かれます。
ただ、大切なお金を投資するとなると、この答えだけでは長期間投資を続ける芯を持つことは難しいです。そこで、この記事では全世界株投資のメリットについて詳しく解説します。
米国株投資ではいけない理由
個人投資家が資産を築くためには「超長期市場にお金を置いておくこと」が非常に重要です。
米国投資では、暴落が起きた時に株式を保有し続ける握力が弱まる可能性があります。下に米国株投資の不安要素をまとめました。
・米ドルの基軸通貨しての地位が低下
・株式が割高を示している
世界の覇権国は必ず移る
歴史を紐解いてみると、世界の覇権を握った国はその地位を必ず空け渡しています。1500年から約500年の間に、4度も覇権国が変わっています。
こちらは米国一のヘッジファンド創設者である「レイ・ダリオ」の動画です。英語ですが、覇権国の移り変わりがわかります。
栄光と衰退の歴史
ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリス、アメリカそして次は…?
100年、200年の大きい単位ではありますが、覇権国は変化しています。
以前に覇権国となっていた、イギリスがアメリカにその座を譲ったのは、戦争による多額の債務でした。
・スペイン:長距離航海による財政逼迫16世紀~17世紀
・オランダ:戦争でイギリスに敗戦17世紀‐18世紀
・イギリス:第二次世界大戦による対外債務18世紀‐20世紀
・アメリカ:20世紀-衰退まで
上の「図の参考元」を参照すると、1940年からアメリカが急激にプレゼンスを高めました。歴史は繰り返すとなると、早くて2040年、遅くて2140年にアメリカが衰退となる可能性があります。
米国一強時代は必ず終わる
過去の覇権国が衰退していく要因としては”国内産業の衰退”、”戦争での疲弊”、”借金の膨張”の3要素が関係していました。
それでは、この3要素について米国の場合にてらしてみましょう。
米国の債務額について
衰退の予兆の一つに借入額の膨張があります。米国の債務額はこちらになります。
ヤバそう…
実はそれほど影響ありません
対外債務額だけを見ると、米国が2位を突き放すトップとなります。しかし、GDP(国内総生産)が世界一なのでGDP比で表すと、それほど影響が大きくありません。
日本がトップかぁ…
日本が不安視される理由がこれです
それ以外に、米国は過去の衰退国と比べ単純比較できない理由があります。
米ドルは基軸通貨となる
米ドルが基軸通貨である理由は国際貿易で使われているからです。
なぜ、米ドルが貿易で使われるの?
1944年に国際会議の場で、米ドルが基軸通貨として採用されました。〔1〕それから、1971年まで世界に広く米ドルが浸透し貿易通貨として仕組が確立しました。
〔1〕ブレトン・ウッズ体制:米ドルとゴールドの交換レートを固定した体制。米ドルを保有すると金を保有していることに同意となった。
これが米ドルが「世界の基軸通貨」となった経緯です。
米ドルと金が交換できなくなった
じゃあドルと金交換してもらおう
交換は不可能になりました
これまでは、通貨を金交換所へ持っていくと、額面に応じた分の「ゴールド」と交換が可能でした。
しかし、米国が基軸通貨となってから27年後の1971年に、交換を突然停止しました。〔2〕
〔2〕ニクソンショック:1971年8月16日(日本時間)に米国のニクソン大統領による金本位制の廃止が宣言されました。
米国の通貨が全世界の通貨となり、実際にその通貨を自分の裁量で増やせたら、借金がないのと同じ意味合いになります。
これによって、米国は自国のさじ加減で「世界の通貨を生み出す力」を手に入れました。
国際通貨としての影響力の減少
先述したように過去の体制から現在まで、米ドルが国際通貨として定着していましたが、今では影響力の低下が顕著になってきました。
新興国の国際決済システム
新興国において、自国の通貨や国際決済システムの構築を築いて米ドルの支配から逃れようとしています。
実際に、中国やブラジルは2023.3.30までに貿易に用いる決済通貨は「人民元」と「ブラジルレアル」で行うことで合意されています。>>産経新聞
中国はロシア、パキスタンについても決済に人民元を用いる協定を結んでいます。さらに、中国はデジタル人民元で世界最後のフロンティアであるアフリカへの影響力を強めています。>>Bloomberg、SUNRYSE MAG
米国のアンダーパフォームは長い
米国投資がもてはやされているのは、至近15年間のパフォーマンスが優れていたからです。
・緑:米国が優位な期間
米国株はこれまで長期間上昇したことで、割高になっている可能性が高いです。
また、一旦、米国外へ資金が流れると2000~2008年間の8年がそうだったように、長期間アンダーパフォームする可能性があります。
米国株の不安な動き
以前にも増して、米国株は割高感を示しています。株式の割高感を示す指標に「バフェット指数」が有名です。この指数が100%を上回ると割高とされています。
バフェット指数とは:世界一の投資家が株価の割安・割高を判断するときに使っている指標で「株式市場の時価総額÷国内生産×100」で算出されます。
・2000年:ITバブル
・2007年:リーマンショック
常に割高だ…
バフェット指数はこのままでは使えません
過去を振り返ると、ITバブル崩壊する前の2000年やリーマンショックが起きた2007年に割高を示しているため、バフェット指数は信頼のおける指標でした。
しかし、リーマンショック以降、この指数はこのままでは機能しなくなりました。その理由は、FRBによる「米ドルの刷り過ぎ」があります。
米ドル発行と株式の関係
・赤:米国株式インデックス(S&P500)
FRBによる通貨を増やしている時(上昇)では、株式は上がり傾向があります。一方、通貨を減らしている(下降)している時には、株価が上下に大きく変動します。
これは、通貨量の増加は”株高の下支え”となり、通貨量の低下は株式の”下支えが無く不安定になる”ことが見て取れます。
つまり、指数が機能しない理由は「実社会にダブついたマネーが株式市場に流れ込んできた」からです。
補正したバフェット指数
判断方法は無いの?
FRBによる増紙を考慮すれば良いです
下で紹介する画像はFRBの増紙を考慮したチャートになります。
・青:増紙を考慮したバフェット指数
指数 | 評価 |
66%以下 | 超割安 |
66%~85% | 割安 |
85%~104% | 標準 |
104%~123% | 割高 |
123%超過 | 超割高 |
リーマンショック(2007年)以前においては、”緑”と”青”の乖離は誤差程度です。
量的緩和が始まったリーマンショック以降においては、乖離が大きく表れてしまいます。
今は割安なの?
いくら、増資分を補正したとしても、現在の株価は割高という結果となりました。>>判定表はこちら
全世界株へ投資するメリット
全世界へ投資するメリットは何と言っても、精神的な心支えです。
80年先まで成長が見込める市場へ投資するのは、暴落が起きても積立を継続する力になります。
・売買せずとも投資先が自動的にリバランスされる
・売買がないため、投資先を変える時の税金が掛からない
人口とGDP
未来は予想すれど、10年先の予想があたることはまずありません。しかし、ほぼ正確に予想できていることがあります。それが人口推移です。
日本は人口減少が著しいですが、世界全体でみると常に増加しています。
こちらの画像は2100年までの予想推移です。
・2100年までに109憶人のピークに近づくと予想
・米全域、オセアニアでは人口増加
・欧州は人口減少が進む(2100年までに1憶人減少)
・アフリカ人口増加は他国と比にならない
人が増えれば、それだけで消費が起こりますので、生産品を増やす必要があります。つまり、「人口増加=GDP上昇」の式が成立します。
GDPとは:国で生み出された、「物」や「サービス」の全ての価値を合わせたものです。GDPはその国の豊かさを表していると言われています。
GDPは直接的に株価に影響を与えるわけではありませんが、企業業績が上がるため、ポジティブな影響を与えるのは間違いありません。
つまり、全世界に投資を行うのは右肩上がりが約束された経済に投資することと同じ意味となります。
投資対象の自動リバランス
先に説明したように覇権国は必ず変わりますので、変わる度に資産運用先を考えるとなると、「変更の労力」「税金の支払い」が必要になります。
しかし、全世界株への投資であれば、あなたが売買する煩わしさがなく、ファンドが投資先や配分を行います。
全世界株への投資は「伸びる企業を取り入れる」「衰退企業の影響力を下げる」「急成長の企業へ配分を増やす」この3つを自動的に行ってくれます。
売買する必要が無いということは、売却時に生じるコスト(税金)を払う必要がありません。
確実な未来は予想不可能
そもそもインデックス投資は、どの企業が大きく伸びるのかが不明だから、分散投資を行ないます。そのため、世界市場へ投資するのは合理的な投資判断となります。
どこの国へお金が流れるのかがわかっていれば、先回りで投資が可能ですが、それがいつなのか不明です。
投資の専門家は全世界投資を選んでいます
過去200年の株式、債券などのリターンを研究したジェレミー・シーゲル氏は資産を築くために大切なのは”全世界株”+”債券”の比率という考えです。
投資は全世界投資が基本なんだぁ
ジェレミー・シーゲル氏の著書で、実践的な内容は「赤本」と言われる書籍をこちらに貼っておきます。
現代ポートフォリオ理論に合致
現代ポートフォリオ理論ってなに?
ノーベル賞を受賞した投資理論です
資産運用に関係する理論でノーベル賞を受賞したものがあります。それが「現代ポートフォリオ理論」です。
現代ポートフォリオ理論をざっくり説明すると、様々な資産を組み合わせることにより、変動率を選択すると「、自ずとリターンが決定される。という理論で、詳しくはこちらで解説しています。>>現代ポートフォリオ理論と長期投資
この理論では、「様々な資産の組み合わせ」が重要となりますので、米国一点投資より、米国株へ影響を受けにくい他国を組み入れるのが、この考えに近いです。
全世界株へ投資するデメリット
これまで、米国の危うさと全世界株投資のメリットについて解説しましたが、米国と比較するとしっかりとデメリットも存在します。
米国株投資派の主張
米国は、国民の家計の約50%が有リスク資産(株式などの資産)であるのも手伝って、投資家ファーストの環境が整っています。さらに、先進国で唯一の人口増加国です。
人口増加に加え、国民・政府・法整備が揃っているのが「米国」です。
次の記事で、米国株式投資について全世界株投資と比較して優れた点について解説します。>>米国株が優れる理由
米国株が強くても問題ない理由
こちらは1900年からの世界株式の市場規模の移り変わりです。
結構変わってるね
どこの国が覇権国となろうとも問題ありません
覇権国が変わってもリバランスが働く効果以外に、米国がより強くなっても対応できます。
例えば、米国株がより上昇して収益が大きくなるとします。過去では、全世界株に占める米国の比率が低いことから全世界と比較し数倍ものリターンが生まれていました。
しかし、現在の米国株比率は60%あるため、それほど差が開きません。それに、米国市場が更に上昇して世界の80%となった場合に、全世界株投資であれば、米国への投資比率が大きくなります。
そのため、米国が強くなれば強くなるほど米国株投資との差が縮小します。
全世界株へ投資する意味
世界の人口が増加するのがほぼ確定していますので、成長が約束されている世界に投資できるのは、投資初心者にも心地よい手法です。
10年以上となる超長期の投資を考えている場合、暴落に必ず遭遇します。そんな時に、全世界投資の本質を知っているということは、狼狽売りを防いで、逆に買い増しに転じることができる「お守り」になります。
超長期で右肩下がりのケースはないの
…世界が壊滅する時ですかね
全世界株投資が不安だということは、世界が消滅する可能性があるのと同じ意味となります。
それを想定すると、シェルターの新設、様々な外貨の確保が先決となります。
この記事があなたの「お守り」となることを切に願っています。
記事が、タメになったと思われたら、“SNS” や “リンク” で紹介して頂けると今後の励みになります。
関連記事
全世界へ投資すると、元本割れのリスクが小さくなる可能性があります。記事はこちら>>全世界株のリスク
米国株と全世界株の変動率は、一般的に言われている平均変動率よりもかなり大きいです。記事はこちら>>米国株と全世界株のリスク
現代ポートフォリオ理論を超長期投資という視点で見ると、違った角度で投資の知見を得られます。記事はこちら>>現代ポートフォリオ理論の欠点
コメント