金って「何」を「どう」買うの?
「インフレ」や「円安」が不安
近年、世界経済の不安定化やインフレの影響を受け、「金(ゴールド)」が再び注目を集めています。
インフレの進行や円安、そして中東やウクライナなどの地政学リスクが続く中、「資産を守るための安全資産」として金に関心を持つ投資家が増えています。
特に日本では、円の価値の下落により円建ての金価格が上昇を続けており、「今からの購入は遅くないのか?」と感じる方も多いのではないでしょうか。
金は、株式や債券のように配当を生まない一方で、「長期的に価値を保ちやすい“守りの資産”」として古くから世界中で重宝されています。
この記事では、金の基礎知識から価格変動の要因、そして初心者が知っておくべき金投資の注意点までをわかりやすく解説します。
短期的な価格変動に惑わされず、資産全体を安定させるための考え方を身につけましょう。
もし、参考になったと思われたら、友人や親戚に “SNS” や “リンク” で紹介して頂けると今後の励みになります。
金とは何か?(基礎知識編)

金(ゴールド)とは、古くから世界中で「価値のある資産」として認められてきた貴金属です。
約5000年の歴史を持ち、貨幣として流通していた時代もありました。
現在では、装飾品や工業用途としての需要に加え、「通貨の代替」「資産保全手段」としての役割が注目されています。
金の特徴:希少性と普遍的価値

金は、地球上に存在する量が限られており、採掘できる場所も限られています。
新たに採れる量もわずかであるため、希少性が高く、価値が下がりにくいのが特徴です。
さらに、腐食せず長期間保存できるため、どの国でも価値が通用する“普遍的な資産”といわれています。

金の採掘って難しいの?

1トンの鉱石から1~8gしか取れません
株や債券との違い

株式や債券は、企業や国の経済活動に基づく「金融資産」であり、景気の影響を強く受けます。
一方、金は企業業績や金利に直接左右されない「実物資産」です。
株価が下がる局面や金融市場が不安定なときほど、“安全資産”として資金が流入しやすい傾向があります。
つまり、金は景気変動とは逆の動きをしやすいのです。
金価格が変動する理由
金価格の仕組みは、主に次の5つの要因で決まります。
このように、金は単なる宝飾品ではなく、世界経済や金融市場の動きを反映する資産としての側面を持っています。
投資の分野では、リスク分散やインフレ対策として金を保有することが有効とされています。
金の需要
現在の金の上昇は投資対象としてのイメージが強くなっていますが、通常では需給の動きの方が強いです。

どこに需要があるの?

中国やインドです
近年の高騰により、オーストラリアやシンガポールなどの宝飾品の買い控えが起きています。
一方、中華圏の買いは多く、金の生産と消費が1位となります。

金が上昇を続ける背景

近年、金価格が上昇を続けている理由には、世界経済の不安定さと金融政策の転換が大きく関係しています。
かつては株式市場が好調で「リスク資産」が主流でしたが、今は多くの投資家が「安全資産」である金に資金を移しています。
では、なぜ金が再び注目を集めているのでしょうか。
利下げに伴うドル安

米ドルが基軸通貨であり、金と米ドルは通常、逆相関の関係があります。

なんで逆相関なの?

金が米ドル建てだからです
基本的に、金の売買は米ドルで行われますので、分子が「金」で分母が「米ドル」の関係となり、分母となる米ドルが下がると価値が増加します。
これまでは、利息を生まない金を保有するより、金利がある米国債の方が世界から魅力的に感じられていました。
しかし、利下げが確定的であるため米国債から得られる実質的なリターンの魅力が減り米ドル安へ繋がっています。
また、トランプ首相の米ドル安を望む姿勢も背景に隠れています。
世界各国の中央銀行
極端に言えば、通貨は無尽蔵に増やし続けることができます。
一方、金は生産量が限られるため、通貨の増紙が行われるたびに相対的な価値の上昇がおきます。

物価高と同じ構造だ

増紙は行われ続けています
この他に、世界各国の中央銀行が金の保有量を増やす動きがあります。
その理由は下の3つです。
こうしたことから、中央銀行はこれまでの金売却から購入に転じ、2020年代以降は金の保有量を増やす動きに変化しています。
金の下落想定

2025年に入ってから金価格は高止まりが続いていましたが、最近では一部で下落の兆しも見え始めています。
「金=絶対に下がらない安全資産」と考えがちですが、実際の市場は常に動いており、需給バランスや通貨、金融政策によって価格は変動します。
特に、ドル高の進行や新技術による供給リスクが注目されると、一時的に価格が下落する場面もあります。
ここ数日では、金ETFと店頭価格の乖離が起き価格の調整がありました。
どの影響も短期的には投資家心理に影響を与えますが、長期の視点で見れば、金投資のチャンスを見極める重要なサインにもなり得ます。
ドル高の進行

金はドル建てで取引されているため、ドルが強くなる(ドル高)と、他国通貨ベースでは金が割高になります。
その結果、実質的な需要が減少し、金価格が下がるという構図が生まれます。
FRBが利上げを行うと、利息のつかない金よりも利回りを得られる債券の方が魅力的になります。
そのため、投資資金が金から債券へシフトし、金市場から資金が流れます。
また、利上げによって米ドルの金利が上昇すれば、海外からドル資金が流入し、為替市場でのドル高圧力も高まります。
これがさらに金価格の下押し要因となります
・他国通貨と米ドル金利の差による魅力向上
人工金の生成という“心理的リスク”


実は、金は作ることができます

錬金術って存在したの!
結論から申し上げますと、人工金の生成はコストが高くて現実的ではありません。
2025年5月にスイスにある素粒子物理研究施設で鉛から金を生成することに成功しています。

じゃあ金を掘る必要がなくなったの?

人工金は現実的に不可能です
つまり、人工金の誕生による金価格の下落は非現実的です。

頭の片隅でよさそう
今後、ニュースで「人工的に金が作られた」という話題が出ると、短期的に市場心理が動き、一時的に売りが優勢となるケースもあります。
投資家の中には「金の価値が下がるのでは?」と考える人が出て、一時的に売りが優勢になるケースもあります。
【地金】店頭とETFの価格相違

通常、ETF(上場投資信託)の価格は、金現物の価格とほぼ連動します。
しかし、需給の偏りが大きくなると、ETF価格が現物価格を大幅に上回ることがあります。
2025年秋はまさにその典型で、投資家の「金を買いたい」という需要が急増し、ETF市場に資金が殺到。
一方で、現物の製造・流通が追いつかず、結果としてETF価格が割高となりました。

現物との乖離が大きくなると、市場は必ずバランスを取り戻そうとします。
その結果、ETF価格が店頭価格に近づくように調整(下落)が起こります。
実際、2025年10月には東証ETF「1540」が最高値からわずか1週間で約24%下落しました。
この下落は、金そのものの価値が急に下がったわけではなく、ETF価格が過熱していた分の修正だったのです。
金投資の注意点

2020年代の金価格の上昇は、まさに過熱とも言える勢いです。
「価格が上がっているから買う」という短期的な動機で購入してしまうと、本来の目的である資産の安定化という視点を見失ってしまう恐れがあります。
金投資の目的はあくまでも「資産全体のリスクを軽減すること」。
ここを誤解しないことが、長期的な運用で大きな差を生むポイントです。
金は富を作らない

繰り返しになりますが、金は保有しているだけではお金を生まない資産です。
株式のように配当金を得られるわけでも、債券のように利息がつくわけでもありません。
そのため、売却して初めて利益が確定します。
つまり「増える」実感が得にくい投資なのです。

現物を保有すると多少実感も…
保管コストと手数料にも注意
現物の地金を保有すると“重み”という形で実感できますが、保有にはコストも伴います。
金地金を自宅で保管する場合は、盗難・火災などのリスクが伴います。
安全性を重視するなら、専用保管サービス(例:田中貴金属の預かりサービスなど)の利用が一般的です。
ただし、貸金庫であると保管料、現物金の投資であれば口座管理料が発生します。
取引手数料:購入・売却時に別途発生
このように、“保有コスト”を加味した上で投資判断を行うことが大切です。
資産の安定化を目的とする
金の最大の魅力は、株式や債券と「非相関」の関係にある点です。
つまり、株価や債券価格が下落しても、金は比較的安定した値動きを見せることが多いという特徴があります。
実際、2020年のコロナショック時には一時的に金の売りが出たものの、最も早く価格が回復したのが金でした。

| ティッカー | 概要 | 概要 |
| SPY | 株式(ローソク) | 米国株指数S&P500 |
| GLDM | ゴールド(金) | 金ETF |
| TLT | 債券(青) | 満期20年以上の債券 |
一部の投資家が「金を売って割安な株を買う」原資となる金の売りを見せた後、再び金が上昇に転じています。
このように、金をポートフォリオに組み込むことで、資産全体の値動きが安定し、暴落時の損失を軽減できます。
現代ポートフォリオ理論についてはこちらの記事で詳しく解説しています。>>現代ポートフォリオ理論とその欠点
金をポートフォリオへ入れる2つの方法

金を購入する方法は、大きく分けて「現物(金地金)」と「ETF(上場投資信託)」の2つです。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、目的に応じて選択しましょう。
ETFの最適解

ETFを利用して金に投資する場合、最も重要なポイントは「現物の金に裏付けされたETFを選ぶ」ことです。

裏付けってなに?

実際の金を保有するということです
もし管理会社が金を保有していなければ、有事の際にETFが破綻し、投資家の資産が減損するリスクがあります。
一方、裏付けがあるETFであれば、金の所有権が間接的に保障され、価格変動をより正確に反映できます。
| ティッカー | 保管場所 | 経費率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| GLD | ロンドン | 0.40% | 世界最大級の金ETF。流動性が高い。 |
| GLDM | ロンドン | 0.10% | GLDよりコストが低く、長期保有に向く。 |
| 1540 | 日本国内 | 0.44% | 信託財産として金地金を保有。日本市場で取引可。 |
| 314A | ロンドン | 0.22% | 2025年に登場した新ETF。コスト面で優秀。 |

どれがいいの?

コストや資産額で判断すると良いです
GLDやGLDMは購入するのに米ドルが必要となりますので、保有する米ドル数によって購入先を選択するのが良いでしょう。
・保有する米ドルが少ない→「314A」
現段階で余剰の米ドルが少ない方は日本円ベースで取引できる「314A」が最適解です。
誕生から日が浅いため資産規模は小さいですが、資金流入が増加しており、貸株設定を行えば経費率はGLDMとほぼ同等になります。
| ティッカー | 為替コスト | 経費率 | 貸株金利 | 総合コスト |
|---|---|---|---|---|
| GLDM | 有 (米ドル建て) |
約0.10% | – | 約0.10% 為替コスト |
| 314A | なし (円建て) |
約0.22% | あり (+0.1%) |
約0.12% |
地金の店頭購入

繰り返しとなりますが、現物の金を購入した時に、保管コストや売買手数料(スプレッド)が発生します。
それ以外に、金の売却益が税務署へ筒抜けになるケースもあります。
・200万円以下:不要(例外あり)
・200万円超:確認・記録
【売却】
・200万円以下:確認・記録
・200万円超:確認・記録、マイナンバー確認
1回の売却金額が200万円を超えた場合、業者が税務署へ「支払調書」を提出することが義務付けられているため、売却時にマイナンバーを紐づけられてしまいます。

売却によって利益が発生すると総合課税となります
金の譲渡によって発生した利益は、給与などの所得と合算して課税されます。
ただし、営利目的として継続的に行われる場合は事業所得または雑所得となります。詳しくはこちらを参照ください>>国税庁

どこで買うのがいいの?
コストコでも金地金が売られており、お得に購入することができます。

コストコの地金は当日レートとほとんど変わっていません。
また、コストコグローバルカードでのみクレカ決済が可能です。(1回の購入が100gまで)
ただし、1度購入すると3か月間は地金をクレカ購入することができません。
金投資の基本ポイントをおさらい

金(ゴールド)は、長い歴史の中で「普遍的な価値」を持つ資産として位置づけられてきました。
株式や債券のような金融資産とは異なり、景気や金利の変動に直接影響されにくく、資産全体のリスク分散に役立ちます。
近年の金価格上昇の背景には、ドル安、インフレ圧力、各国中央銀行の金購入といった世界的な金融構造の変化があります。
また、人工金の生成ニュースなど一時的な市場の動きも予想できますが、根本的な価値を揺るがす要因ではありません。
投資方法としては「現物保有(金地金)」と「ETF投資」があり、それぞれにコストや保管の注意点があります。
特に、ETFを選ぶ場合は実際に金に裏付けされた銘柄を選ぶことが安全性を高めるポイントです。
最後に重要なのは、「金は富を生む資産ではなく、資産を守る資産」であるということ。
価格上昇だけを目的にせず、長期的なリスクヘッジの一環として保有することが、本来の金投資の意義といえるでしょう。
記事が、タメになったと思われたら、“SNS” や “リンク” で紹介して頂けると今後の励みになります。
関連記事
無リスク資産として短期債券も重宝されます。こちらの記事で、債券についてのリンクが張ってあおります。債券でマネーマシーンの作り方など初心者から中級者に向けて記載しました。>>債券のまとめ
戦略的に金を組み入れたポートフォリオが「黄金のポートフォリオ」です。このポートフォリオはリーマンショック年でもプラスのリターンをたたき出しました。>>黄金のPF




