”お金”について説明できない
お金と価値の違いがわからない
「お金の正体とは」という大層なタイトルとなりますが、
お金の正体は”人の労働”となります。
iDeCo(や確定拠出年金制度)、NISAが国民の多くに浸透する前に「お金の正体」について考え直す時が来ています。
そんな方へ、「お金のむこうに人がいる」や「きみのお金は誰のため」と言う良本が思考の手助けとなること間違いありません。
この記事はこの良本の抜粋から浅学にして非才の身ではありますが、私的な見識を踏まえ解説します。
著者の紹介
この2つの書籍は、驚異の採用率1.5%の狭き門を突破し、ゴールドマン・サックスで16年間 金利トレーダーとして活躍した田内 学氏による書籍となります。
書籍の内容は、巷にあふれる金融系と一線を画す内容です。
この書籍は「お金についての本質」が書かれており、2冊目に発表した小説版はたった3ヶ月で異例の15万部を突破した「お金教育系の小説」です。
それでは、早速本書の解説をします。
書籍「きみのお金は誰のため」のエッセンス
現代ではお金で色んな物へ交換ができるようになった代わりに「壁」が出来てしまっています。
この「壁」のお陰で、お金を多くだせばどんな商品でも手に入るように錯覚してしまいます。
よく考えてみると、手元に届くまでには、生産者、集配業者、などの色々な方の労働を経て店に陳列されています。
そして、我々に提供される「商品」に注視すると原価が0円だと言うことに気が付きます。
原価ゼロ理論
商品を提供する時に支払うお金を社会全体と言う枠組みで分解すると、究極的には「人件費」だけになります。
どうして原価は0円なの?
社会全体を俯瞰すると0円となります
例えば、お店でパンを購入しようとします。すると、小麦粉の集配業者への人件費、生産する農家への人件費、となり自然由来から誕生する小麦自体は0円です。
もっと言うと、集配業者の使う船舶や車両も部品単位で分解していくと、採掘して出てきた鋼材からできた物なので原価は0円に人件費が乗っかってきたものです。
農産物を育てるための水、土は元をただせば全て「自然由来」で、自然は誰のものでもないから0円です。
それに、誰かが「自然物」から生成した肥料をつかって、生産しているから社会全体で見ると「人が働くこと」がお金を生み出しています。
原材料の上昇で得する人物
現在の日本のインフレは悪いインフレだと言われています。
何を基準に悪いといってるの?
原材料の上昇によるものだからです
日本は生産する商品の原材料を輸入に頼っています。
そのため、インフレの恩恵を受ける一次産業が少ない日本には恩恵を受ける人々が極端に少ないです。
原材料を輸入に頼っていながら、最近では世界を魅了する製品を生みだすことができなかったために、コスト上昇の部分が価格へ転嫁できなくなっていました。
そんな状況下でも、儲かっている国があります。それが原材料(一次産業)の生産国です。
物価上昇の初期段階でも漏れなく価格転嫁できるのは生産者です。
視点を国単位で見ると、どこの国が物価上昇で稼ぎやすいかが見えます。
日本でも一次産業を強化すれば?
国土が少ない日本ではなかなか難しいです
国土が少ない日本では「量」で世界へ打って出るのは難しいです。
しかし、日本食ブームに合わせて、和牛や果物などの「質」で成功するケースも増えています。
国内から流出したお金
先述したように、通貨は労働の代替なので、原材料の対価として支払われた「円」が海外へ流れると、将来その金額分の労働を行なう必要が生じます。
貿易黒字が赤字を吸収しないの?
過去の貯金を取り崩しています
過去に、日本の製品が世界を魅了していたころには、貿易黒字が続いていました。
その状態では、海外へ「労働の貸し」を付けることができました。
しかし、現在ではサービス収支を中心に赤字分が増えてきました。
海外への投資で得られる収益のことである。
・貿易収支
財貨の収支およびサービス収支。
・経常収支
第一次所得や貿易収支に寄付や贈与などを加えた合計。
携帯電話が二つ折りの時代では、携帯端末やウォークマンなどの製品は日本製が多くを占めていました。
しかし、現代の携帯電話(スマホ)になると海外製がその多くを占めています。
忘れがちな商品の「効用」について
商品を手に入れるための本質はその「効用」にあります。
例えば、ジャケット一つとっても効用は人それぞれで、“かっこいい” “着心地が良い” などがあります。
しかし、この効用に「価格」というモノサシをあてると、効用に錯覚を起こすことがあります。
価格が錯覚を起こすってどういうこと?
例えば、20万円のジャケットが超特価の半額以下の8万円で販売されると、ちょっと考え込んでしまうことがあります。
これは、効用の本質である「自身にもたらす効用」を見失っているに他なりません。
”良い材料”を使っているっていうことでは?
”誰に”とって都合の良い材料だろうか…
多くの人の手を介在すると、より多くの付加価値が付いて商品自体の効用が上ることがあります。
しかし、価格が高いからと言って安易に「自身にもたらす効用」が増えていると考えるのは安直すぎます。
割引価格を重視しすぎると、初売値を高価に設定して、激安特価と変える手法に対し購買意欲が高まってしまいます。
その結果、激安特価が市場平均より高額であったとしても割引(値引き)に傾いてしまいます。
お得に釣られそう
このようなことは、「価格の高い物=効用が高い」という錯覚に陥っているからです。
こうした動きは、生産者側が効用の高い製品を作る意欲が薄れてしまいます。
更に、この傾向が強くなると、効用の高い商品が商品棚から消え、その結果、生産者や消費者ともに幸せになることはできません。
そんな高い服買わないからイメージが…
自動車を例にしてみましょう
例えば、日本国内の自動車についても同じことが言えます。
軽自動車とBMWを比べた時に国土が小さい日本では、効用が高くなるのは「軽自動車」です。
その理由はBMWの持つ、「300㎞/sで走れる走行性能」や「長距離運転で必要な乗り心地の良さ」は日常生活で現れる場面はありません。そうした、稀なニーズはレンタカーでこと足りるからです。
逆に、「軽自動車」は日常生活の買い物や狭隘地域の住宅へ訪問する際にどこでも気軽に動きやすいという自動車が持つ本質的な「人を運ぶ」効用が高いです。
本質を捉えた投資アセット
投資家的な視点で見ると、本書から「2つの投資先」が見えてきます。
・地理的関連が強い「日本企業」
直接的な価値(効用)は「商品」にあり、価格転嫁が容易にできる原材料への投資が有効です。
そして、効用の高い商品を享受するためには地理的に優位な「日本企業」への投資で付加価値を高める企業への投資が必要不可欠です。
商品(コモディティ)への投資
商品への投資は個人投資家の間ではマイナーな部類に属しています。
しかしながら、世界の農産物生産スピードより印刷機のボタン一つで発行する増紙のスピードは比べものにならないほど差が大きいです。
そうしたことから、合理的に考えると商品価格の上昇は想像に容易いです。
具体的な投資先はこちらです
実際に、商品への投資は「投資信託」によるものがわずかで、信託報酬も最安のもので実質0.93%と高く、純資産額も100億円程度とやや少額です。参考>>eMAXISプラス コモディティインデックス
コスト・流動性を勘案すると国内ETFへの投資がベターですので、こちらにコモディティ銘柄を紹介します。
銘柄 | 1699 | 1687 | 1688 | 1695 | 1696 | 1697 |
投資先 | 原油 | 農業関連 | 穀物 | 小麦 | コーン | 大豆 |
資産総額 | 260億 | 321億 | 27億 | 120億 | 30億 | 13億 |
経費率 | 0.50% | 0.49% | 0.49% | 0.49% | 0.49% | 0.49% |
「1687」はブルームバーグのコモディティインデックスのサブ指数で、コーヒー、トウモロコシ、綿花、大豆、大豆油、砂糖および小麦の先物で構成されています。
農業製品への投資で注意すべき点は「天候要因」「需給要因」によって大きく変動しやすいという所です。この要因はどちらも季節性要因が内包されています。
日本の証券会社で取り扱う海外ETFには、マネックス証券で「DBC」があります。
(過去にマネックス証券で「DBA」も取引できましたが、現在は取り扱いがありません。)
海外の証券会社で取引を行う場合は手間が増えてしまいますが、豚肉、コーヒーなど種類は多彩にあります。
国内への投資
国内の労働による給与を海外企業へ移すのは「合成の誤謬」となります。
個人で富の蓄積はできても、社会全体が潤い個人へ還元するという「本質的」な部分を好転させる原動力となりません。
その点、自国である日本企業への投資は「効用」が高い商品を生産する手助けとなり、その繰り返しが現役世代だけでなく、子世代へも繋がります。
こうした、子世代への幸せの引継ぎは、日本企業へ投資することで簡単に行えます。
でも、どこへ投資すれば良いの?
指数へ投資するのも一つの手です
日本市場全体へ投資するには、大きく分けて3つの株式指数が存在します。
TOPIX | 日経平均 | JPX400 | |
ティッカー | 1475 | 1321 | 1364 |
資産額 | 1.7兆円 | 10兆円 | 0.3兆円 |
経費率 | 0.0495% | 0.11% | 0.0495% |
銘柄数 | 約2,200 | 約225 | 約400 |
概要 | 東証に上場する株式銘柄を時価総額加重方式で算出された株式指数 | プライム市場から流動性、セクターを考慮して選定された株価平均型指数 |
東証に上場する銘柄から、時価総額、ROE等を基に選ばれた時価総額加重型指数 |
特徴 |
・日本株式市場全体の動向を示す指数 |
・海外投資家がアジアへ投資する時に選ばれる指数 ・株価の単純平均なため、株価の高い銘柄影響が強い |
・資本効率や投資家からみて魅力的な企業を選定している ・定量評価、定性評価を加味して算出している ・2014年から誕生した新しい指数 |
日経平均とJPX400については1口から購入可能で2万円代が最低購入額となります。
その一方、TOPIXは1口300~400円で購入できるため、積立投資に向いています。
積立投資に向いている理由は投資信託には劣りますが、下落したときのドルコスト平均法が行いやすいからです。
JPX400ってなに?
簡単に解説します
・選定基準に過去3年の債務超過や最終赤字や営業赤字の企業を除く
・ROEと累積営業利益をスコアリングで比較
・ガバナンス統制について加点で補正
・400銘柄となるまで3年平均ROEが高い順に採用
JPX400は、アベノミクスが始まった2014年に日経新聞社とJPX総研で考案された指数です。
現在、「JPX150」という注目される指数が2023年に誕生しました。こちらの指数は日本版S&P500と表現される注目指数です。詳しくはこちら>>日本版S&P500
2024.8.13 | TOPIX | 日経平均 | JPX400 |
投資信託 | SBI・iシェアーズ ・TOPIX |
SBI・iシェアーズ ・日経225 |
iFree JPX日経400 |
純資産総額 | 33億円 | 57億円 | 86億円 |
信託報酬 | 0.1133% | 0.1133% | 0.22% |
見直しの概要はこちら>>TOPIXの見直し
銘柄が絞られるTOPIXに注目です
TOPIXは2028年7月にかけて段階的に銘柄数を約4割減らします。
また、新しいTOPIXの採用銘柄はプライム市場だけでなく、全市場から採用されます。
書籍の紹介
<お金のむこうに人がいる>
<きみのお金は誰のため>
どちらの本も、経済学を避けてきた方でも読める書籍となっており、著者が一貫して伝えたいことは「お金を過信しないこと」との警告に聞こえます。
”お金”についての根底となるスタンスが養えますので、子供への金融教育の前知識として読んでおきたい内容です。
「お金のむこうに人がいる」は高校生以上向けで、「きみのお金は誰のため」は小説仕立てなので小学生や中学生でも読みやすい書籍です。
【まとめ】お金の正体
お金の本質を追求すると、「理想だ…」とか「結局日本はどうなるの?」とか批評があるのは仕方がありません。
お金に余裕を感じる人が少ないから、今回紹介した書籍について酷評が寄せられているのかもしれません。
エビデンス至上主義化した現在ではエビデンスが求められているのかもしれません。
しかし、データサイエンスを少しカジった人であれば、表面的なエビデンスが如何に信憑性がない物なのかを理解しています。
本質的な事柄に対しエビデンスを求めてしまうと陳腐化が避けられません。
どんな時でも、判断の軸となる芯が大切で、紹介した書籍は「お金の”芯”」を見つける糧となる書籍です。
NISAによる投資商品の割合が海外資産へ置き換わっています。この現状はこの書籍を読んで立ち止まって考えるべき問題だと警告のように感じました。
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