FOMCの何が重要なの?
何に注目すれば良いの?
米国の経済や株式市場を支配するのは、FOMCの金融政策です。
この記事では「最新のFOMC」とFOMCについて初心者でもわかるように解説しました。
もし、参考になったと思われたら、友人や親戚に “SNS” や “リンク” で紹介して頂けると今後の励みになります。
【最新】FOMCの発表内容
FOMCでは全会一致で0.25%の利下げが決定しました。これにより、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は4.50~4.75%に下がります。
・利下げ後も経済活動を抑制するのに十分高い水準である。
・過去の大幅利上げが労働市場の軟化につながることを回避しようとしている。
公式サイトによる文章はこちらから確認できます。>>FRB
パウエル議長発言趣旨
直近の選挙で、トランプ大統領が当選し、上下の両院が共和党という結果となるため、大統領選についての質疑が集中しました。
その理由は、再選を果たしたトランプ大統領は数ヶ月前に「パウエル議長を即刻クビにする」という発言があったからです。
「大統領による退任を求められたら、退任するのか?」という質問に対し、「ノー」と答え、更に議長の解任または降格は法的に認められないと言明しました。
今回のFOMCは特別に、目立ったニュースはありませんでした。
FOMCよりも、米国大統領選の結末が早くついたことによる、安堵感から株式が買われていっている動きを示しました。
最新のSEPが見たい方はこちらで下へスクロールします。>>最新SEP
FOMCとは何か?
FOMCは、アメリカの金融政策を決定する機関です。
主に政策金利を設定し、アメリカ経済全体の成長を安定させる役割を持っています。
FOMCは、米国の中央銀行であるFRB(Federal Reserve Board、連邦準備制度理事会)の一部で、経済の安定を図るために、利上げや利下げ、量的緩和などの政策を実施します。
FOMCの開催月
FOMCは年8回の会議を開き、そこで経済状況を評価し、必要に応じて政策金利や通貨の流通量を変更します。
※緊急で開かれることもあり。
こちらのサイトで確認ができます。>>MNI Market News
開催月 | 開催日 | 経済見通し(SEP) |
1 | 1/30~1/31 | |
3 | 3/19~3/20 | 〇 |
4/5 | 4/30~5/1 | |
6 | 6/11~6/12 | 〇 |
7 |
7/30~7/31 |
|
9 | 9/17~9/18 | 〇 |
11 | 11/6~11/7 | |
12 | 12/17~12/18 | 〇 |
SEPってなに?
FRBの経済見通し等の見解が見える資料です
経済見通し(SEP)について詳しくは後述しています。飛ばして見たい方はこちらです。>>最新SEP
FOMCの役割
FRBはアメリカの中央銀行として機能し、金融政策を管理し、通貨供給量を調整することでインフレーションを抑制しつつ、最大雇用を目指します。
FRBはそのために、FOMCを通じて利上げや利下げなどの金融政策を実行します。
現在は、インフレ圧力が落ち着いてきており、「失業率」が重視されています。
失業率は雇用統計で発表されます。
こちらの記事で最新の雇用統計について解説しています。>>最新の雇用統計
FOMCメンバー
FOMCは、FRBの理事7名と地方連銀総裁5名の12名から構成されます。
議長も大統領で指名されます
だからトランプ大統領の時にゴタゴタしたんだ…
NY連銀が常任入りしている理由は、ウォール街がある州で、金融政策の実行に関わる取引を管理するシステム管理者であり、1942年7月7日に法的に常任メンバーとして定められました。
氏名 | 政策スタンス | |
常任:議長 | パウエル | 中立 |
常任:NY連銀 | ウィリアムズ | 弱タカ |
常任:副議長 | ジェファーソン | 中立 |
常任:理事 | バー | ハト |
常任:理事 | ボウマン | タカ |
常任:理事 | ウォラー | タカ |
常任:理事 | クック | 弱ハト |
常任:理事 | クグラー | 弱ハト |
輪番:連銀 | クリーブランド連銀 :メスター |
タカ |
輪番:連銀 | リッチモンド連銀 :バーキン |
タカ |
輪番:連銀 | サンフランシスコ連銀 :デイリー |
中立 |
輪番:連銀 | アトランタ連銀 :ボスティック |
ハト |
タカ派?ハト派?
引締め派か緩和派の違いです
上のFOMCメンバーのスタンスは経済状況に応じて変化しますので、これまでの主張を考慮して割り振りしたものです。
今年のFOMCも残り1回となったので、市場関係者は翌年のFOMCメンバーに注目しています。
氏名 | 政策スタンス | |
常任:議長 | パウエル | 中立 |
常任:NY連銀 | ウィリアムズ | 弱タカ |
常任:副議長 | ジェファーソン | 中立 |
常任:理事 | バー | ハト |
常任:理事 | ボウマン | タカ |
常任:理事 | ウォラー | タカ |
常任:理事 | クック | 弱ハト |
常任:理事 | クグラー | 弱ハト |
輪番:連銀 | シカゴ連銀: グールズビー |
中立 |
輪番:連銀 | ボストン連銀: コリンズ |
弱タカ |
輪番:連銀 | セントルイス連銀: ムサレム |
不明 |
輪番:連銀 | カンザスシティ連銀: シュミッド |
不明 |
・就任日2023年8月21日:シュミッド
中央銀行の政策決定者としての日が浅く、まだ明確な立場を示す機会がないため不明となります。
前回会合後の発言を見る限りでは両者とも「ややタカ派」の印象があります。
市場関係者の金利予測
市場関係者の予測とFOMCの決定が乖離していると、株価の変動に繋がります。
市場関係者の予測ってみれるの?
各FOMC毎に政策金利がどの程度になるのかを予測しているサイトがあります。それが「CME FedWatch」です。
このツールは多くの投資家に利用され、金融政策の方向性をリアルタイムで示しています。
こちらの記事でこのサイトの使い方を画像付きで解説しています。>>Fed Watchの使い方
FRBによる経済見通し(SEP)
四半期ごとに「経済見通し」(Summary of Economic Projections)が発表され、その中に政策金利予想が発表されている為、FRBの方向性を理解する上で重要な発表となります。
これらの予測は経済状況に応じて変更される可能性があるため、単なる予測であり確約ではないことに留意する必要があります。
【最新】2024年9月19日SEP
SEPの公式サイトはこちら>>Summary of Economic Projections
ドットプロットの解説
ドットプロットはSEP資料に記載され、FOMCメンバー各人が当年から翌2年分の予想を発表したものが、点でプロットされます。
投票権がないメンバーも加わっているんだ!
下のドットチャートはFed watchからの引用となり、実際には「赤色」と「水色」はありません。
・赤色:債券先物から算出
赤色のドットがFed watch独自に設けられたドットで、実際の債券先物から算出している金利です。
どこを見れば良いの?
中央値です
「ドット」の一つ一つがFOMCメンバーによる予測を表しています。
FOMC全メンバーによるもので過度な予測から平均がズレることがあるため、中央値を基本的な見通しとされています。
このチャートで金利がピークに達したのかをある程度判断できるため、消費者にとっても金利を固定するタイミングを計る指標となります。
結構重要なんだね!
でも、過度な注目は厳禁です
政策金利を決定する投票権を持たないメンバーもドットプロットに表示されるため、情報過多となっており、予測が現実と一致するとは限りません。
また、パウエル議長も「過度に注目すると全体像を見逃してしまう」とドットプロットに依存し過ぎを警告しており、FRBはドットが示す「基本シナリオ」から経済状況の変化に迅速に対応する用意があります。
コロナショック時も緊急会議を開いて利下げしました
中立金利と自然利子率の解説
SEPにはFRBが考える失業率や中立金利(longer run)が公表されています。
市場関係者が注目する点は「失業率」「PCEインフレ」「政策金利」の3点で、longer runと現在の乖離に注視します。
上の表の失業率は4.2%で完全雇用を達成していると判断され、2024年の4.4%は概ね達成していると評価できます。
政策金利は、中立金利2.9%に対して現在4.4%と乖離が大きくこれから下げていく考えがあることを示してます。
中立金利って?
次に解説します
中立金利とは「中立的な金利」
FRBは経済を刺激も抑制もしない金利水準を目指しています。
前述したlonger runにある金利は理論的に中立的な金利であり、これを中立金利と言います。
中立金利ってどうやって求めるの?
中立金利とは名目の自然利子率です。
中立金利にある期待インフレ率は、市場参加者が予測する今後10年間の物価上昇率です。
期待インフレ率は外部サイトでチャートで表されています。>>クリーブランド連邦準備銀行(月足
現在の政策金利が、上の中立金利よりも大きければ、引き締め的な政策を取っていると認識されます。
日足のサイトは無いの?
BEIならあります
SEPが公開された2024年9月の例では、中立金利が2.9%とされるので、0.6%が自然利子率となります。
自然利子率とは「実質的な中立金利」
自然利子率は「r*」(アールスター)と呼ばれ、経済活動や物価を加速も減速もさせず、完全雇用で貯蓄と投資を均衡させる実質金利を指しています。
理想的な金利かぁ
米国は0.5%としています
実は、自然利子率の0.5%は理論的な説明がない経験値となっており、見直しの可能性が言及されています。
もし仮に、自然利子率が1%上昇すれば中立金利は3.4%となるため、利下げ幅の縮小や金融引き締め時の利上げ上昇余地が大きくなってしまいます。
FRBの市場ショック予防
FOMCメンバーによる発言は株式市場を大きく変動させます。
メンバーの中で一番影響力が高いのは、FRB議長の発言となります。
FOMC後の発言や、委員会の発言には常に注目されています。
FOMC関係者の発言
FRB議長による発言が最も注目され、市場に大きな影響を与えます。
バーナンキFRB議長が量的緩和縮小の可能性に言及したことで、S&P 500指数が1日で約1.4%下落しました。
この発言は「テーパータントラム」と呼ばれています。
パウエルFRB議長が「中立金利からはまだ遠い」と発言したことで、ダウ平均が約3%下落しました。
この発言は、FRBが予想以上に積極的な利上げを行う可能性があると市場が解釈したためです。
パウエル議長が議会証言で「インフレ抑制のためにより大幅な利上げが必要になる可能性がある」と発言したことで、S&P 500指数が1.5%以上下落しました。
FOMCメンバーの発言でも、経済データの転換期など方向感がつかめない時期に株式市場へ影響を与えます。
発言日 | 発言者 | 影響 |
2013年6月19日 | ジェームズ・ブラード理事 | S&P500が約1%上昇 |
2016年8月26日 | スタンレー・フィッシャー副議長 | ダウ平均が約0.6%下落 |
2018年11月28日 | リチャード・クラリダ副議長 | ダウ平均が約2.5%上昇 |
2019年6月4日 | ラエル・ブレイナード理事 | S&P500が約2%上昇 |
こうした、市場への影響を鑑みFOMCメンバーが公に発言できない期間(ブラックアウト期間)が設けられています。
実は、FOMC前に株式市場に最も影響を与える方は他にいます。
WSJ記者による観測気球
FRB議長が急遽、政策転換を行った時に、市場が混乱することがあります。
例えば、利上げを停止した時に、市場関係者が「FRBが利上げ方針を撤回するほど景気悪化している」と受けとってしまうと、パニック売りが起きてしまうからです。
こうしたことを防ぐために、予め情報をリークして株式市場がどう受け止めるか反応を窺おうとします。
このような役目を担う人が「Fedウォッチャー」です。
期間 | 氏名 | 備考 |
1990年代から2000年代 | グレッグ・イップ(Greg Ip) | アラン・グリーンスパン議長時代に活躍 |
1980年代から2010年代 |
デビッド・ワッセル (David Wessel) |
ベン・バーナンキ議長時代に活躍 |
2006年-2014年 | ジョン・ヒルセンラス (Jon Hilsenrath) | ベン・バーナンキ議長時代に活躍 |
2006年-現在 |
ニック・ティミラオス (Nick Timiraos) | ジェローム・パウエル議長時代 |
Fedウォッチャーは歴史的にWSJのFRB担当記者でした。
例えば、株式市場の上昇ペースが速すぎるときに、確定していない政策をFedウォッチャーに書かせることで、”ガス抜き”を働かせることもあります。
不確実の方がいいの?
会見によるサプライズを防ぐ意図があります
市場参加者が既定路線を仮に定めていたら、行う政策がその通りであったとしても、FRB議長の発言の受け取り方により変化が大きくなります。
これは、FRBの意図しない方向への変化となります。
つまり、市場参加者の考えを分散することで株価の変動を防ぐことに繋がります。
【まとめ】FOMCについて
FOMCは毎年定められた理事5名と毎年交代となる地区連銀総裁7名の12名の投票で金融政策が決定されます。
FOMCの中で年に4回発表される「経済見通し」(SEP)は、今後2年のFRBの動向を読むのに重要な資料となります。
FOMCは年に8回しかなく、FRB議長の発言機会が限られているから、株式市場に大きな影響を与えてしまいます。
この変動を小さなものにするため、FEDウォッチャーにリーク記事を書かせ、市場関係者にサプライズを与えないようにしている。
記事が、タメになったと思われたら、“SNS” や “リンク” で紹介して頂けると今後の励みになります。
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市場関係者が将来の政策金利がどのように推移していくのかを予想しているサイトが「CME FedWatch」です。こちらの記事でFedWatchの使い方を解説しています。
FRBの金利は「雇用統計」と密接に関わっています。こちらの記事で最新の雇用統計と、初心者でもわかりやすく雇用統計を解説しています。