給与と年金の関係は?
社会保険額の負担はどのくらいあるの?
早期引退やFIREを目指すうえで、多くの人が資産額や投資利回りに注目します。
しかし、実際に引退してから「こんなに固定費がかかるとは思わなかった」と後悔する原因の多くが、社会保険の知識不足です。
会社員を辞めると、健康保険や年金の仕組みは大きく変わり、特に国民健康保険の負担は想像以上になるケースも少なくありません。
この記事では、投資初心者の方でも理解できるように、早期引退で必ず知っておくべき社会保険の仕組みと、その対策を順を追って解説していきます。
もし、参考になったと思われたら、友人や親戚に “SNS” や “リンク” で紹介して頂けると今後の励みになります。
早期引退でまず知るべき社会保険の仕組み

早期引退をすると、社会保険は次のように切り替わります。
・年金:厚生年金 → 国民年金
この切り替えにより、以下のような変化が起きます。
早期退職を計画する際には、この3つのポイントを必ず押さえておく必要があります。
国民健康保険(国保)の基本と早期引退で起きること

早期退職すると、まず直面するのが「国民健康保険(国保)って意外と高い…」という現実です。
会社員のときは保険料の半分を会社が負担していましたが、退職後はすべて自己負担になります。
さらに国保は“前年の収入”で計算されるため、退職初年度ほど保険料が高くなるケースが多く、いわゆる「国保ショック」が起きやすくなります。
この章では、退職後に国保がどう変わるのか、なぜ高くなるのか、そして保険料を安くする具体的な方法までわかりやすく解説します。
退職したら国民健康保険へ加入

会社員を辞めると、それまで加入していた 協会けんぽ・健康保険組合 を脱退し、住んでいる自治体の 国民健康保険 に加入しなければなりません。
国保の保険料は、以下で決まります。
・均等割(加入人数)
・平等割(世帯単位の固定額)
・調整額
国保は会社員の社会保険料と異なり扶養という概念がありません。
そのため、世帯の加入人数分を支払うことになるため高額となるケースが多いです。
上の四つのうち 所得割が最も大きく、FIRE後の保険料を高くする原因 になります。
退職初年度は「国保ショック」が発生しやすい

多くの早期引退者が驚くのが、収入がゼロなのに高額の保険料が請求されるという現象です。
理由はシンプルで、国保は 前年所得 で計算されるためです。
→ 退職翌年の国保は40〜60万円
例:前年年収400万円
→ 退職翌年でも25〜40万円ほど
自治体によって差は大きいですが、早期引退で最初に直面する固定費としては無視できません。

国保ってかなり高いんだね

次に国保を安くする方法を解説します
国保を安くする方法

国民健康保険料は対策次第でかなり抑えられます。
代表的な方法は以下のとおりです。
→社会保険料の継続と比較して安い方を選択する。
※雇用主が負担していた分も負担増となる注意が必要。

任意継続すると安くなるの?

年収によって損得が分かれます

・協会けんぽの場合、標準月額の上限が32万円となります。
・健康保険組合は独自の上限を設定しています。
→所得が一定以下で住民税が減額・免除される。
退職後の収入コントロールで所得割を下げる
→退職金の受取方法により影響を受ける
→一つの世帯を分離することで保険料が下がる場合がある。
子や親(会社員)の健康保険の被扶養となる
→国保から外れ、自己負担がゼロとなる
住民税は自治体によって非課税世帯の基準が変化します。
そのため、「どの自治体に住むか」が固定費に直結するため、住む場所の選択が大きな節約効果を生みます。
実はこの他に、国保から逃れる方法があります。
国保の合法的な負担軽減策

早期退職で国保負担が増える理由は以下の2点です。
・被扶養者にも医療分と支援金分が発生
※未就学児は均等割りが50%軽減されます。
この項目をクリアするには2つの方法があります。
一番、オーソドックスな逃れ方は大企業のアルバイトとして106万円以上の年収が想定できる働き方をして社会保険に加入することです。

大企業は51人以上の従業員企業を指しています

社会保険には扶養の概念があるため、扶養者を社会保険の扶養に入れることで、社会保険を労使折半で、かつ、扶養者の分を負担ゼロにすることが可能です。
こうした「最低限働く手法」は労働単価が上昇している中で、健康保険の年収額が変わっていない昨今、注目されている新しい労働戦略です。

結局、働くしかないのかぁ

法人設立の方法も有ります
もう一つの手法は、マイクロ法人を設けて、その法人から自分へ最低限の給与を支払い、協会けんぽへ加入する方法です。
※社会保険料は自分と法人(自分)が払うことになります。
協会けんぽへ加入すれば、扶養者分は社会保険料を支払う必要がなくなります。
マイクロ法人を開く方法は、今ではメジャーな手法でFIRE民が良く行っている手法となります。
マイクロ法人と国保の比較

マイクロ法人を設立する最大の動機の一つは、個人事業主として加入する国民健康保険・国民年金(全額自己負担)から、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入することで、保険料負担を抑えることです。
しかし、扶養者の国保負担が軽減する代わりに、法人設立の費用と年間維持費が必要になります。
※設立費用が別途発生
(株式会社:約20万~30万円)
(合同会社:約6万~10万円)
→約7万円(赤字でも必要)
・社会保険料(会社負担分)
→役員報酬額が最低等級:13.5万円~
会社負担+個人負担=27万円/年~
・経理関連費
→会計ソフト:1~3万円程度
→税理士:年間10万円前後
※自分で経理関連管理の場合は会計ソフトとなります。
マイクロ法人が経済的に有利となるためには、税理士の有無で変わります。
そのため、マイクロ法人を創設する際には、経理関連を自分で行うと決めてから実行すると良いでしょう。
→約43.5万円
所得割:(300万円-43万円)×7~9%
均等割:4人×約3万円
平等割:1世帯 約2万円
・支援金分
所得割:(300万円-43万円)×2~3%
均等割:4人×1~1.5万円
平等割:1世帯 約0.7~1万円
・介護分
※40歳を超える場合
所得割:(300万円-43万円)×2~3%
均等割:40~64歳人数×1~1.5万円
平等割:数千~1万円
国保は自治体ごとに料率・均等割・平等割が全く異なるため、正確な金額は市町村のシミュレーションを使う必要があります。
国保改正の見通し

マイクロ法人を設立した時のメリットとしては、社会保険料(費用)が確定されているところです。
しかし、確定申告の有無による社会保険料の増減がでるのは不公平ではないかと考える財務省の動きもあります。
一方で、マイクロ法人(協会けんぽ)の場合は、個人の株取引の利益を確定申告しても、給与(標準報酬月額)のみで保険料が決まるため、保険料は上がりません。
これは資産運用がメイン収入となるFIRE民にとって、マイクロ法人の大きなメリットです。
リンク先:国税庁-株式譲渡の課税
現在議論されているのは、高齢者(75歳以上)の社会保険料についてです。
株式譲渡の利益まで社会保険料の算定に入れるのは難しいでしょうが、今後、確定申告していない配当金に対しても健康保険料の算出がなされ、対象者が高齢者から順次引き下げされそうです。

ちなみにNISAは対象外です
・対象:後期高齢者(75歳以上)
・目的:確定申告の有無による不公平感を排除
現役世帯の負担減少
国民年金の基礎知識(早期引退で最も大事なポイント)

引退時の想定として大切なことは、基礎年金部分を満額受給することです。
労働者が加入する厚生年金は全額かえって来ることはありませんが、基礎年金は割の良い保険となります。
また、早期退職している場合は付加保険料で基礎年金を増額させることも選択できます。
国民年金の基本

国民年金は、20歳〜60歳までの全員が加入する「基礎年金」 で、満額受給は次のとおりです。
金額:年間 約82万円(月額 約6.8万円)
※40年以上収めても増額なし
早期引退をすると、この納付を「自分で」続ける必要が出てきます。
国民年金を満額受給するための方法

国民年金を満額受給するためには、次の方法があります。
早期引退をすると、この納付を「自分で」続ける必要が出てきます。
この中でも、「付加保険料」は必ず支払っておきたい保険料となります。

会社員時代の収入と「増える年金額の係数」


年金と年収にどんな関係があるの?

年金増加には0.005481の係数で算出できます
厚生年金は、掛けた保険料に応じて受け取る年金が増える「報酬比例部分」があります。その計算に使われるのが 年金係数(0.005481) です。
つまり、平均年収600万円の場合、加入年数が10年延びると年金の増加は 約32.9万円/年 増える計算となります。
まとめ:早期引退では「国保と年金」が最重要コスト

早期引退を実現するうえで、資産額と同じくらい重要なのが「社会保険の理解と対策」です。
退職後は健康保険が国民健康保険へ、年金は国民年金へと切り替わり、保険料は全額自己負担となります。
特に国民健康保険は前年所得をもとに計算されるため、退職初年度に「国保ショック」が起きやすく、想定以上の固定費になるケースも少なくありません。
一方で、収入調整や軽減制度、任意継続、扶養の活用などにより負担を下げることは可能です。
さらに、最低限働いて社会保険へ加入する方法や、マイクロ法人を設立して協会けんぽに加入する選択肢もあります。
自分の家族構成や生活スタイルに合った制度を選ぶことが、早期引退を安定して続ける最大のポイントです。
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